決戦だ!皆、油断せずに行こう!
―四天王・氷使いのカンナ―
俺達は本当の意味でも最終調整を行った。
チャンピオンロード内にいるトレーナーを全て
倒したのだ。大体四天王は中のトレーナー
より2,3Lvが高いらしい。それほど苦戦せずに
いけたので、四天王もそんなに辛すぎると言う
わけではなさそうだ。ポケモンを回復させ、薬類
も全て揃える。ポケモンの調子を確かめ、緊張
させないように接する。緊張していないのは
ファイン・フィオンのエーフィコンビ。スタリア・フレイ
フリアも同じくだ。ただ…能天気すぎるのが一匹。
それは清流。あくびなどしている。まぁ、力として
活躍してくれるなら構わないのだが。あまりに能天気
すぎてバトル中に寝たりなんかしたら…キレるぞ。おい。
「清流!バトル中に寝たりしたらいけないぞ!」
「リュ―!」
まぁ、ちゃんと起きているから構わないだろう。
「いいな、お前達!今から四天王に挑戦するぞ!
負ける事は許されないらしいが…大丈夫。絶対にだ。
お前達の実力なら、たとえ苦戦しようとも先へ進める!
俺も精一杯頑張る。だからついてきてくれ。嫌なら言え。
パーティーを変える。俺についてきてくれるか?」
そう問い掛けると皆は瞳に強い決意を宿し頷いた。
パーティーを変える必要はなさそうだな。そしてある事
をふと思い出した。昨日凛から届いた物だった。色々
袋に入っているようで開けてみると…それぞれの
ポケモンを象り、シンボルの宝石がついたネックレスが
入っていた。しかも、各ポケモンに合うようにチェーンも
調整してある。お守りと言う事だろうか。俺にも入って
いた。紅く、深い色の宝石。それは星の形をしていて
中心にはハート型の水晶が埋め込まれている。ごく
小さいのだが、光に反射するときらきら光る。まるで、
エーフィの額の宝石の如く。俺はそれをつけ、ポケモン
達にも全てかけてやった。そしてポケモンをボールに戻し
中へと入った。もう怖くなっても後戻りは出来ない。
扉がギィッと重い音を立て閉まった。真っ暗だった室内に
ライトが灯る。俺にスポットライトが当てられた。
「いらっしゃい!チャレンジャー!名は?」
「フォーカス出身の国光だ!」
「あら。フォーカス出身なの?フォーカスからの挑戦者は3年ぶりね。」
「誰だったんだ?」
「凛。とても生意気なくせに一流の腕を持つ。
灯の血を引いてるだけあるわ。貴方には
一体どんな関係なのかしらねぇ?」
「凛は俺の大事な人だ!そして俺は一族になる為に修行しに来た!」
「そう。そうなのね。さて、分かってるわよね。
私の使うタイプは氷タイプ!怖いわよぉ。
凍っちゃったらあんたのポケモン、動けないんだもん。
アハハ!覚悟はいい?行くわよ!パルシェン!」
「いけっ!ファイン!」
相手が繰り出してきたのはパルシェン。見た感じ
は、大きな真珠貝だ。しかし、獲物を挟んだら
その獲物は逃げられないほどに締め付けるらしい。
あれに挟まれたら終わり。危機感をもたないと。
「あられ!」
「かわしてスピードスター!!」
あられがたくさん降り注ぐ。だが身軽ですばしっこい
ファインには何の意味もなかった。高速移動で避けて
いるかのように、ほとんど目に見えていない。右に左
に、残像がやっと見えるほど。はっきりファインの姿が
確認できたのは攻撃を仕掛けるときだった。たくさん
の星がパルシェンの殻の中を狙い、攻撃する。
パルシェンは勢いよく飛び退った。
「波乗り!」
「サイコキネシス!アイアンテール!」
何故、一気に二つも技を指示したかと言うと、俺は
あるバトル技のタッグを研究していた。強力なサイコ
キネシスによる、波乗りの方向変換。そしてその波に
紛れ、敵の目を欺く。相手に一番近づくまで尻尾に
力を溜めさせ、一番近づいたらアイアンテールで急所
を狙う。それはシャオを相手にして、何度も訓練した。
その成果は今回、現れた。相手の放った波がファイン
のサイコキネシスにより向きが変わった。パルシェンの方
に向き、一気に向かったのだ。上手い具合にファインは
隠れ、一番近づいた所で…アイアンテールを繰り出した!
バキン!と、どこか嫌な音がした。パルシェンの殻に少し
ひびが入っていたのだ。パルシェンはそのまま戦闘不能になった。
「あんた、その技…」
「独自で編み出したタッグ技さ。」
「…そうでなくちゃ!フォーカスの
トレーナーとは言えないわね!
行くのよ!ジュゴン!」
次に出てきたのはジュゴン。氷タイプだが、水も
持っている。電気技は普通に効くだけか…しかし
さっき使ったタッグ技は見切られているだろう。それ
とも、やぶってやるとばかりに波乗りを使ってくるか
…どちらにしろ、少々苦戦しそうだ。
「冷凍ビーム!」
「かわせ!そしてサイコキネシス!」
ジュゴンは思ったより速く、冷凍ビームを打ってくる。
しかし、ファインの素早さはそれを上回っていた。
ファインのいた所に冷凍ビームが打ち込まれた時、
すでにファインは別の所へ移動しているのだ。それ
が繰り返され、ジュゴンはもう打ちたくないなぁという
顔に。それを見計らい、ファインはサイコキネシスを
打ち込んだ。威力は最大だったらしく、ジュゴンは
混乱。攻撃指示をしても、混乱し、自分に向かって打つ始末。
「ファイン。バトルとしても、手加減しろ…」
「エフィ!」
いつの間にかジュゴンは戦闘不能に。混乱が解け
ないのだ。次に出してきたのはヤドラン。…何か、
ぼっけーとした奴だな。バトルできるんだろうか?
いいや、どんな奴でも見くびっちゃいけない!先手必勝だ!
「ファイン!スピードスター!」
「ヤドラン!波乗り!」
波乗り…すぐに技を変えるのは無理だし…星は
水の中に解けていってしまった。そして、大量の水
がファインを飲み込んだ!
「ファイン!」
「さぁ、念力でかき回してあげなさい!」
ヤドランはエスパー技も覚え、その念力で水を一気
にかき回し始めた!ファインは苦しそうだ。一体どう
すれば…一瞬、俺の脳裏に、セキチクジム戦が
浮かび上がった。もう、ポケモンを苦しませたくない!
開放する方法は…!そうか!今かかっている力より
大きな力をかければいいのか!
「ファイン!!サイコウェーブだ!!!」
ファインの力。それはヤドランの念力を凌駕した。
どのエスパータイプより、サイコパワーを多く作り
出せ、それを最大限に発揮する事ができる。それ
が、ファインの力。俺が育て上げて、手に入れた
フィオンより強いわけ。ファインが元々より持っていた
力。カンナは驚いている。水はまだファインを包んでいる。
「サイコキネシス!アイアンテール!!」
タッグ技が見事に決まり、ヤドランは戦闘不能に。
次に出してきたのはルージュラ。…何か、キモッ。
っていうより怖い。何もんだ?ポケモンなのは間違いないな。
「おうふくビンタ!」
「高速移動!」
攻撃なんてさせやしない。ファインはまだまだ余裕。
水に揉まれても、さほどダメージは受けていない。
スタミナも、驚くほど持っているのだ。もしかして俺は
本当にとてつもない逸材を捕まえてしまったのかも
しれない。そう思えるほど、ファインは強く賢い。
よし、ファインが後ろに回りこんだ!
「今だ!アイアンテール!」
ファインのアイアンテールが決まった。立て続けに
ポケモンを倒されてカンナは唖然としている。いくら
フォーカス出身だからといって、こんなに強いとは
思ってもいなかったのだろう。すると、最後のポケモン
を繰り出してきた。それはラプラス。
「私のラプラスを甘く見ないでよ…のしかかり!」
「避けろ!スピードスター!!」
ラプラスは驚くべき速さで飛んだ。
ファインも避けるのがやっとだ。
しかし、機転を利かしてそれを切り抜けている。
だが…攻撃を仕掛ける暇がない。前にもこんな事があったような、なかったような。
どうしたものかなぁ。よし。
「ファイン。とまれ。」
ファインを半ば追いかけるような状態だったから、
ラプラスはそのままシャーっと滑っていって、壁に激突。
…もしかして、とまれって指示しなきゃよかった?
とにかく、動きが鈍ったので攻撃指示。
「噛み付く!」
がぶりと一発。噛み付いたファイン。痛そうだな…
って言うか、実際痛かったし。噛まれたもんな、俺、手を。
「今だ!サイケ光線!」
一筋の光がファインの額より放たれた。
至近距離だったのもあって、ラプラスは戦闘不能に。
「…貴方の勝ちよ!だけど、四天王をたった
一人倒したからって、いい気になるんじゃないわよ!
四天王はあと3人。四天王の恐ろしさ、味わいなさい!」
俺にそのせりふは届いていなかった。
「…勝った。一人目…終了…よくやった!ファイン!」
「エフィッ!フィ!」
ファインを思い切り抱きしめた。少し
苦戦しつつも、ファインはよくやってくれた!
感激しているのもきりをつけ、
次の部屋へ向かう。
次はシバ。格闘タイプだ。
今度はフィオンが活躍する番。
お前の本当の力、見せてくれよ。

作者:次はシバ。格闘タイプでぇす!
手塚:ファイン、よくやったな!
作者:一応、ファイン君は…また今度に。